JAPA報 Vol.14

軌跡を刻む、未来を描く

社史・周年記念誌シリーズ2〜「判断の理由」を残す社史の力

歴史を振り返るとき、単に結果よりも「なぜその判断をしたのか」「どのような状況で、どのような心境だったのか」が気になるものです。
経営においても同じです。
判断の理由やどのような状況だったかを残しているかどうかで、未来の選択に使える社史になるかが決まります。

1.成功も失敗も、「理由」が未来に効く

社史は単なる出来事の年表ではありません。
そこに記録されるべきなのは、その時に下した判断と、その背景にあった理由です。

・なぜ新規事業に挑んだのか
・なぜ撤退を選んだのか
・なぜリスクを取ったのか

成功だけでなく、失敗の記録にも意味があります。
「この考え方ではうまくいかなかった」という痕跡は、未来に同じ局面を迎えたときの教訓になるからです。

2. 社史は“理念の適用例”の宝庫

どんな会社にも経営理念やビジョンがあります。
しかし、それが“言葉だけ”で残っていると、実感を持って受け継ぐことは難しい。
社史は、その理念がどんな場面で使われたのかを物語として伝えます。
理念が抽象的なスローガンではなく、現実の判断基準として働いた痕跡がそこにあります。

3. 伊藤忠商事の「三方よし」

例えば、伊藤忠商事では、公式サイト内の沿革や統合レポートにおいて、創業者・伊藤忠兵衛が掲げた「三方よし」の精神が、単なる言葉としてではなく、事業の基盤として実際に“判断の理由”として使われた文脈とともに記録されています。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という考え方は、創業以来160年以上にわたって“不変の精神”として受け継がれ、時代ごとの意思決定に活かされてきました。
理念を言葉として残すことと、理念がどう使われたかを記録すること。
この両方があってはじめて、理念は未来に受け継がれていきます。

経営の歩みには、いつもその時々の事情や想いがあります。社史に残るのは、答えではなく、その時の選択や考え方の軌跡です。
振り返ったときに、そこから何を感じ取るかは、未来を担う人たち次第ですが、「なぜその道を選んだのか」が残っていれば、次の世代が考えるための確かな手がかりになります。

周年記念に関する
おさえておきたいポイント

記念品を選ぶ3つのポイント

周年記念の代名詞ともいえる、記念品。

今回は、周年の記念品を選ぶ際のポイントを3つ紹介します。

最も大切といっても過言ではないのが、
受け取る相手の立場に立って選ぶこと。

「お土産に置物をもらったけれど、扱いに困ってしまった。気持ちは嬉しいけれど……」といった経験がある人は多いはず。

年齢層や性別を意識して、誰もが使いやすい品物を意識すれば「もらって困る」チョイスは避けられます。

社員さん向けなら例えば、実用性を重視しつつ、会社を身近に感じてもらえるクリアファイルやエコバッグなどを選ぶのもひとつです。

2つめは、企業メッセージをこめること。
モノだけぽんと渡すよりも、周年の意味や今後のビジョンを添えましょう。
そのひと手間が、記念品の価値をグッと押し上げます。

最後は、長く使ってもらえる品質を意識すること。実用性とは方向性の違うアプローチになりますが、企業ブランドを印象付ける上質な記念品は、一時的な話題づくりで終わらず、長期間愛用してもらえます。取引先に向けては、この方向性が適しているかもしれませんね。

今週のトピックス
〈壮大なる取り組み〜周年記念誌の編纂-2〉

メインコラム記事の補足になりますが、社史を本当に未来に役立つものとするには、出来事や成果を並べるだけでは不十分です。

そこに込められるべきは「なぜその判断をしたのか」という理由と、当時の状況や心境です。
たとえば、新規事業への挑戦や撤退の決断は、結果だけを見れば成功・失敗の評価に終わります。

しかし、なぜ挑戦を選んだのか、なぜリスクを取ったのかという“理由”が残されていれば、後継世代が同じような局面に立ったときに学びの材料となります。

さらに重要なのは、経営理念が具体的にどう活かされたかという記録です。

理念を言葉として掲げるだけでは抽象的ですが、判断の根拠として使われた事例が社史に刻まれていれば、理念は現実の経営判断を支える指針として生き続けます。

社史とは単なる歴史のまとめではなく、過去の思考と選択を未来へ伝える知恵の集積です。 また一方、楽しい読み物であってほしいいですね..

今月の名言/銘言

文化は戦略を朝食にしてしまう
〜戦略よりも文化が長期的な成功の鍵〜

by ドラッカー

メンバーコラム

田本 夕紀 Yuki Tamoto
このコーナーは、JAPAメンバーの自由投稿です。メンバーがリレー式で投稿します

「みんななかよく」という、創業者の思い

先日はじめて知った、サンリオの企業理念は「みんななかよく」。『キティちゃんを好きになるってことは、みんな仲良くなってもらうこと』。創業者の辻信太郎氏は、テレビのなかでこう語ります。
企業理念の根っこにあるのが、辻氏の戦争の原体験。『戦わなければ、やっつけられる。そのために人が死ぬのは仕方がない』。そんな戦時中の思考に対して、辻氏は「そんなバカなことはない。話し合えばいいじゃないか」と憤り、1960年、人と人が仲よくなる仕事をしようと、サンリオを創業。それ以来、たくさんのキャラクターを世に贈ってきました。理念を知る前とあととでは、サンリオへの印象がガラリと変わりました。思いは人を動かす。改めて、思いの力を実感しています。

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